The Institute of Expression
Non-verbal Communication

ノンバーバル・コミュニケーションの役割

アメリカの心理学者メラビアンにってノンバーバル・コミュニケーションは、コミュニケーションの中で73%の影響があると言うことが知られています。しかしこれは周りの状況や相手、それまでのコミュニケーションの流れなどによってこの影響は変わりますし、明確にその影響力を数値化することは不可能に近いと考えています。ただいずれにしても、コミュニケーションのなかでこのノンバーバル・コミュニケーションは、言葉に対してより大きな影響を与えていることは間違いありません。

ではどんな影響を与えるのでしょうか?

ノンバーバル・コミュニケーションには、いろいろな役割があります。 その役割からその影響を探ってみましょう。いろいろな役割がありますが、表現やコミュニケーションにとって重要な役割を書き出してみます。

  1. 言葉を強調したり、印象に残したりする役割(言葉をフォローする役割)
  2. 感情や気持ちを明確に伝える役割(感情の強弱や大小などの量的な表現)
  3. 伝える人の印象を左右する役割(魅力や違和感などその人のイメージを伝える役割)
  4. そのノンバーバル・コミュニケーション自体が意味を伝える役割
  5. 周りの雰囲気を調整する役割
  6. 自分自身の中で起こる感情や気持ちを調整する役割

この他にも、相手に反応を促したり、発言権を受け渡しを調節する、コミュニケーション自体を調節する役割など、いろいろな役割があります。ただこの役割や機能に関しては、心理学や行動科学によっていろいろな分類のされ方をしており、統一された見解がありません。これは一つのノンバーバル・コミュニケーションをとってみても、状況や相手、コミュニケーションの流れなどによってその役割が変わったり、2つ3つの役割が重複していたりと、役割や機能が交錯しているからだと思われます。上にあげた6つはあくまで「表現の学校」が表現やコミュニケーションに影響を与える機能の、スキルアップのための目標としてまとめたものです。ただノンバーバル・コミュニケーションのスキルアップを目指す上で、この役割を認識しておくことは重要です。

6つの機能の中で、1-4は表現やコミュニケーションに直接関わる機能です。 ノンバーバル・コミュニケーションは多くの場合、言葉を発する時に伴って使われます。1 は発せられた言葉を強調したり、補完したりする行動です。種類のベージで述べる声に関するニア・ランゲッジは、主にこの役割をになっています。また印象に残す場合、2の感情を表現する機能と相まって感情表現を加えることによって強調する方法もとられます。

2 は表現にとって最も重要な感情を表現する機能です。言葉は感情や気持ちを表す単語が数多くありますが、それがどれぐらいの感情なのか、量を伝えることが難しいのです。ノンバーバル・コミュニケーションは、感情の大小や強弱というような量を表現することができます。 感情表現にはこの量的な表現が不可欠なのです。

3 の“印象”と呼ばれるものには、その人の性質や嗜好、位、価値観などによって、その人がどういう人なのかを想像させるものです。これは“第一印象”というように、実質的なコミュニケーションをとる前から影響するもので、その後のコミュニケーションに大きな影響を与えます。この印象操作には言葉ふくめたコミュニケーションの脈絡を形作る演出の効果が大きく、ノンバーバル・コミュニケーションの役割全てが関わってきます。TPOやマナーなどはこの印象操作をコントロールしようとするものです。 印象操作は、「表現の学校」にとって大きな課題であり、印象操作のサイトで議論を進展させたいと思います。

4 の意味を伝えるノンバーバル・コミュニケーションは、主に動作によって行われています。例えば、お辞儀、握手や方向を指さす動作、人差し指と親指で輪を作るOKサインなどを言います。これはその意味が地域やグループ、文化や時代によって、意味を持たなかったり、変わったりします。

5 の雰囲気を調整する役割は、心理学ではあまり言われていませんが、演劇では重要な行為です。高級な静かな雰囲気のレストランで、小さな子供が大声を出したり、走り回ったりして雰囲気が壊されたと感じたことはないですか?

また、スポーツの世界で、キャプテンやコーチなどが選手を鼓舞するために手を叩く姿を見たことがあるのじゃないでしょうか? 舞台では“場のテンション”というものを大事にします。これはその場の雰囲気が緊張感を持っていることを言います。これはコミュニケーションの場面でも感じられます。諍い(いさかい)をしている二人が、向かい合ってにらみ合っているときなど、この“場のテンション”が高まっているといえるでしょう。

これらのようにその場の雰囲気を保持しようとしたり、変えたりするのは、ノンバーバル・コミュニケーションの機能に頼るところが大きいのです。この場の雰囲気や状況を作り出すことは、コミュニケーションにとって重要な意味を持ちます。この雰囲気作りや状況操作は、演出のサイトで議論を進める必要があるでしょう。

1-5 は表現やコミュニケーションなど相手や外へ向けての役割でしたが、6 はノンバーバル・コミュニケーションが自分自身の気持ちや感情など内面にも影響を与えることを言っています。アメリカの心理学者ウィリアムス・ジェームスは、「外からの刺激に対して身体の変化が起こり、その変化に対する感覚が情動である」と述べています。また近年ポルトガルの脳科学者アントニオ・ダマシオは、感情は身体変化に伴う情動を基に想像やイメージ、知識、状況の感知などを加えて起こる心の変化である、と言っています。つまり、身体の変化が先に起こり、その変化に対して心や脳が変化し、感情が起こるという考え方です。これに関しては心理学でも脳科学でも今も議論が繰り返され、結論は出ていません。ただ私の俳優としての経験から言うと、俳優の中には顔に悲しい表情を作るだけで、涙が出て悲しい気分になるという人がいます。

また顔を下向きにすると鬱の気分になったり、正しい姿勢をとると気持ちが積極的になったり、前頭葉が活性化するという実験結果もあります。つまりノンバーバル・コミュニケーションの中には積極性や自信、対人不安などの自分自身の気持ちや気分などの内面を変化させる可能性があります。この積極性や自信、対人不安などは、表現やコミュニケーションにとって重要な心理面の要素です。この内面への影響は、まだすべてが解明されたわけではありませんし、議論を進める必要があるでしょうが、私はノンバーバル・コミュニケーションを意識して筋肉を積極的に使うことによって、気持ちや感情をコントロールし、脳を活性化できるという考えを持っています。自分の内面に影響を与えることに関しては、ほかのサイトでも詳しく述べたいと思います。


記: 沖田 さとし
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引用文献
マジョリー・F・ヴァーガス
「非言語コミュニケーション」
新潮選書・石丸 正 訳
アントニオ・R・ダマジオ
「感じる脳」
ダイヤモンド社・田中三彦 訳
春木 豊
「動きが心を作る」
講談社現代新書